フィギュアカスタムの解説




LinkIcon前の記事を見る _bizarre_fabicon.gif_ 次の記事を見るLinkIcon

上品でセクシーなストッキングを開発する

クールガール用カスタムパンストクールガール用カスタムパンスト

柄編み機弊社の奈良工場、編み立て室の風景です。大半は中国へ移転したので、今ではこの柄編み機だけ残しています。柄編み機②編み機の正面。靴下、パンスト編み機は基本的にこんな機械を使います。柄編み機③使用する糸の種類。通常、表糸と芯糸を使いますが、パンストは芯糸だけ使います。だから、薄くて軽いのです。柄編みの生地編み生地の拡大図。パンストや靴下は青線の縦方向に一本の針が編み目を編んでいきます。クールガールのセクシーなストッキング苦労したストッキングの開発。正面から見ると完璧なのですが…クールガールのセクシーなストッキング背面図背面は、残念ながら3mmもの太いバックシームが目立つ欠点が、そのまま…クールガールのセクシーなカスタムストッキング1年半の開発期間を経て、実現した約1mmのバックシームのカスタムストッキング。

クリックすると拡大します。

.

1/6 ストッキングをカスタマイズする。

     たかがパンスト、されどパンスト…。今まで開発してきたビザールクイーンのカスタムウェアの中で、何が一番苦労したと思いますか?

     たぶん、意外に思われるかもしれませんが、実はこのパンストだったのです。もともと、ビザールクイーンのコンセプトを立ち上げたとき、他社ですでに商品化されているものは創らないという方針でした。ですから、企画当初から除外しておりました。ところが、第一作の開発商品として、00001コルセットの写真撮りに使うため、市販されているストッキングやパンストを数社から購入して着用させたところ、大変こまりました。ビザールクイーンのレザーウェアとパンストとの間で質感レベルに差がでてしまい、バランスがとれなかったのです。そこで、いろいろ考えたのですが、ビザールクイーンのコンセプトに基づく世界観を表現するには、トータルでカスタムウェアを開発、展開するしかないなあと決めました。

     ここから、予想外の苦労が始まります。当初、非常に楽観的に考えていました。というのも、弊社は会社案内でも申し上げている通り、もともとキッチン、バス、トイレタリーのホームウェアのメーカーですから、縫製や編み立てが専門です。通常、市販されているパンストは写真のような靴下編み機をさらに、針数を増やしてだいたい片方の足のストッキングを500本以上の針数のストッキング専用機にして編みたてます。イメージとしては、直径13cmくらいの円形のシリンダーの円周上を500等分したと考えてください。このため、針も500本使うので、とても細い針を使います。こうして、高密度で細いナイロン糸を使うので、実際のパンティストッキングは、一般の靴下と違って、薄く軽く、そして伸縮性のとてもあるストッキングになるのです。


     以上のことから、自社にある編み機で作ればいいと、安易に考えていたのが甘かったのです。弊社の編み機は一般の靴下機ですので60本から250本くらいまでの針数です。これで上記のストッキングと同様に編みたてるには、芯糸だけで編みたてます。そうすると、写真のようになります。通常、靴下やこれを改造した洗浄暖房便座カバーなどのニット編みには、芯糸だけでなく、表糸としてアクリルやウール糸または、綿糸を使います。スポーツソックスやショートソックスを想定していただけばわかりますね。でも、1/6用のパンストをカスタム化したいので、芯糸のナイロンだけで編みたてます。さて、これでできあがり!と思って装着したら驚きました。

     全然、美しくない。履かせても、伸びるところと詰まるところが乱れてしまい、編み目がそろわない。足首や膝頭付近は生地がたぶるので編み目が密集し、ひざやすねは引っ張られるので編み目が伸びて薄くなる…。おまけに、当然1/6ですから片足の針数が60本くらいしかないので!1/1世界のパンストの500本にはとても及ばない。必然的に、粗い編み目になりパンストというより、まるでおばちゃんの履くタイツじゃん!あれこれ、機械を設定しても改善しません。どうしても、この写真のような編み目の感じになる。とても、私たちが普段、見ているあのストッキングのような繊細なイメージにならない…。


     そこで、いっそのこと、実際のストッキング、それも本場ヨーロッパの高級ストッキングを生地として使えばいいと思い、早速ネットで購入、縫製してみたら…。さらに見栄えが悪くなった!500本近い針で編むわけですから、使う糸は極細のため、上の写真のさらに1/10くらいの細かい編み目が、履かせたときの引っ張り具合で、ぐちゃぐちゃに伸び縮みするもんだから、あたかも足に黒い蜘蛛の巣がまとわりついたみたい…、トホホの世界でした。

     さて、どうする?そろそろ、順次製品があがってきて、写真撮りをしなければならない。ちょうど、おととしの暮れから、去年の1月頃のことです。他社製品はだめ、自社の編み機もだめ。途方にくれていると、1点だけ他社で編み生地ではなく、通常の織り生地を加工したものがある事に気づき、これにヒントを得ました。いままで、現実のパンスト=編み機=編み生地で作るという先入観だったわけですが、これを非現実だけど、あえて織り生地でパンストを作るという発想に変えたわけです。そこで、6年ほど前に海外のランジェリー専門の生地ショップから輸入した生地がいろいろあったのでこれを倉庫から出してきて、使えそうなものを探しました。実は、当初ビザールクイーンの素材はレザーではなく、一般素材で考えていたため、たまたまこのようなランジェリー生地を購入していたのです。

     結果としては、これが大正解でした。本当に不思議なのですが、結果から言うと、1/1世界ではありえない、つまり非現実なわけですが、これが、1/6世界ではありえて、あたかも1/1世界の現実感をだすことができる!具体的に言うと、1/1世界ではパンストは編み生地で作り、織り生地は絶対使わないのが現実である。ところが、1/6では1/1の現実通り編み生地で作ると非現実的なパンストになり、逆に非現実的な織り生地で作ると現実的なパンストになる(チョーややこしい!)

     これらの織り生地は、織りですから、当然、縦糸と横糸から形成されるので綺麗に織り目が通ります。この織り目が1/6のパンストでは、編み目に見えるわけですね。すると、ご覧のとおり正面から見ると、普段我々が目にする、あのストッキングのイメージどおりに感じられます。これで、ようやく製品の写真撮影ができるようになり、このHP上でご覧いただいたとおりです。ただ、これを商品化するには、まだまだ長い道のりを越えなければならないのでした。それは、織り生地を使うため、どうしても縫製をしなければなりません。そうすると、問題になったのが、その縫い目の処理でした。これをごまかすには、不透明な生地を使うのが手っ取り早い方法です。通常、アンダースキンとして、クールガールの間接を見えないように、隠すために肌色の透け感(sheer:透明感)のない不透明な生地を使います。これですと、縫い目が見えなくなるという利点がありますが、そのかわり、透明感がなくなるので1/6では、分厚いタイツ、あるいは、もっこりしたパッチみたいになるんですね…。ビザールクイーンとしては、現実のストッキング同様、あのsheer感にこだわりました。女性の足の美しさを1/6でも再現したい、そのためには、どうしても、透明感が無いとだめですから。しかし、それを現実に表現する方法がわからない…。

     現在、掲載しているすべての商品写真はバックシームがご覧のようにとても太くて見苦しいと思います。しかし、時間の制約上、やむなく、未解決のまま撮影に使用しました。(できるだけ、縫い目が見えないアングルで、ごまかしてますが…汗)ミシン担当者に、極力細い縫い目になるようにミシンを改造させたり、縫い方を変えたり…しかし、なかなか解決方法が見つからない。3mmも縫い目があると、1/1の現実世界では18mmにもなります。2cm近い縫い目がパンストにあるわけ無いので、リアル感が出ないのは、当たり前ですね!実際には、だいたい編みタイツでも3mmくらいです。だから、1/6では、0.5mmにしないとだめということになります。ただ、いくらなんでも0.5mmまではやりすぎなので、なんとか1mmにまで細くできればOKということで、開発努力をつづけました。その結果、1年半ほどかけて、ああ、、やっとご覧のとおりにまで、こぎつけました。

     どうでしょうか?これで、約1mmほどです。まあ、ここまで細くなれば、今後発売するハイヒールと合わせても、バランスがとれていますね。これなら、自分自身が納得できるし、満足できるレベルである。これなら、ビザールクイーンのお客さんにもお勧めできる。そんなわけで、やっと今回、自信を持ってご提供できる商品として、販売できるようになりました。もちろん、これからも、より細いバックシームにできるよう、日々改良していきたいと思いますが、とりあえず、今まで市販されているカスタムストッキングに不満があった方に、ぜひビザールクイーン純正カスタムストッキングを一度、お試しいただきたいと思います。1/1世界でも、それだけで専門のパンストフェチの方もおられるくらい、奥の深いストッキングの世界ですが、1/6世界でも、実に奥の深いカスタムストッキングの世界だなあと、1年半の開発過程で感じた次第です…、ハイ。

※この記事は、2010年に発行したnews8号の記事を編集記載したものです。