クールガールのハイヒールを作る



クールガールのセクシーな手を作る

クールガールの手パーツクールガールのデフォルトのハンドパーツ。女性の手にしては一回り大きい感じです。
     全員悪女のnewsページでもご案内しましたが、かねてから気になっていたクールガールのハンドパーツをカスタム製作することに着手しました。今回は、仮想空間でのクールガールのカスタムハンドの製作レポートをお届けします。従来、商品撮影時にもっとも良く使うリラックスしたポーズの手のパーツですが、撮影するたびに違和感を覚えていました。どうしても、一回り大きくて、男性の手のイメージがします。とても、女性のセクシーな手とは感じられません。足のカスタムパーツも出来上がったので、思い切ってビザールクイーンのカスタムハンドパーツを作ることにしました。





cyber beauties1998年からサイバービューティーズの商品名で販売していた3Dモデルデータ集サイバービューティーズのデータ弊社製品サイバービューティーズ(CB)のボディ形状データをもとに開発スタート。2010年6月20日CBの手のデータボディデータから手の部分だけを改造したもの。結局ボツに。上はオリジナルのCGのハンドパーツ。2010/6/30

     今回もまた、懐かしいCB(Cyber Beauties)のボディデータを使い、手の部分を切り出します。とりあえず、デフォルトのクールガールの手のパーツと比較してみます。クールガールでは、原型製作をされた方が何人かおられるようで、出来栄えに差があります。手袋をはめたハンドパーツの原型がもっともバランスの取れた美しい造形だと思うのですが、あいにく一番使用頻度の高い、リラックスした表情の手のパーツは、ごらんのように少し違和感があります。
     今回のカスタムハンドパーツの作成では、前回の足首と違い、できあがった原型をもとにいろいろな仕草、女性らしい表情のある手を造形する必要があります。そのために、CG同様、可動を前提にモデリング(造形)しなければなりません。そのために、できるだけ、軽い(簡素な)データになるようにポリゴンを減らします。今回のカスタム化の作業に伴い、CBのオリジナルデータをチェックし2010年6月20日から作業開始、10日後の30日にはご覧のようにできあがりました。しかし、改造したデータ形状では、爪の表現に限界があることがわかり、これ以上改造しても限界があることがわかり、いっそのこと新規に作り直したほうが早いと決断。ただ、新規製作だと、かなり時間がかかることが予想できたので、7月の海の日のある3連休にまとめて突貫作業をすることにし、とりあえず、ここで、しばらく作業を中断することにしました。

クールガール用手のモデルデータ人差し指の基本的なポリゴン形状が完成。クールガール用手の指のデータよりリアルにしようと、指の皺をモデリングしたのですが…クールガール用手の皺のモデルデータレンダリング画像で確認すると、老婆の手のイメージ。やりすぎて失敗しました。

     さて、3連休の17日より、作業を再開。手の指は、基本的に人差し指をもとに完成させたら、それを中指~小指までコピーで転用して製作するのがセオリーです。このため、原形となる人差し指の形状はとても重要です。可動しやすいように、極力簡素化したポリゴンで造形します。しかし、リアルにこだわりすぎて、指のしわを表現するようにモデリングしたのは失敗でした。ごらんのように、レンダリング画面でプレビューしてみると、やりすぎです。これでは、まるでおばあさんの手のようです。ここまでのリアルさは、クールガールの場合、不要です。なぜでしょうか?
     ここで、よく考えないといけないことがあります。フィギュアを造形する場合、どのようなリアルバランスにするかということです。アニメよりにするか、逆に、超リアルよりにするか、あるいはその中間バランスにするか…。いずれにせよ、ちゃんぽんだけは絶対に避ける必要があります。ヘッドは超リアルなのに、ボディや手足のパーツはりかちゃんみたいな造形ではバランスがとれません。その点から、もう一度クールガールを見直すと、中間よりの造形と思われます。つまり、爪の造形は必要だが、指の皺までは必要ない、逆に皺まで彫りこんでしまうと顔やボディ、足のパーツとのバランスがとれなくなり、手だけがあまりにリアルで浮いた感じになる。商品ページでいろいろなモデルさんを起用していますが、全体に見て同じくらいのリアルバランスでしょう。これに対し、HOTTOYSのようなニュージェネレーションモデルのあの超リアルなヘッドを持ってくると逆に今度は、頭だけがリアルすぎて、クールガールの他のパーツとバランスが取れなくなります。わかりやすい例として、クールガールでは、乳首は表現されていませんが、HOTTOYSでは、ヘッドのリアルさとバランスをとるため、しっかりと表現されているのはごく当然でしょう。

クールガール用手の修正再び皺取りの修正作業の結果、バランス良くなりました。クールガール用カスタムハンド手の甲などもすべて完成したポリゴン基本形状。このままでは、原型切削には粗すぎるので…

     そんなわけで、翌日の18日に皺とりの修正作業をしました。最終的に、ご覧のような控えめな感じに形状を抑えて完成しました。そこで、人差し指をもとにコピーして、サイズをそれぞれの指にあわせて調整。ついでに、手の甲なども動かしやすいようにできるだけ修正して、簡素化します。梅雨明け宣言の出た、日曜日でしたが、ワークステーションからでる排気熱で汗が吹き出して、根気の要るモデリング作業を黙々と作業するのは大変でした。皆さんもご存知のようにwindowsというMicrosoftのOSは、とにかく不安定なので、CG作業のように専門職では作業データの消失など不測の事態を避けるために、通常ワークステーションという堅牢なコンピューターを使います。よほどのことが無い限り、フリーズしたり、OSが異常終了することがないかわりに、かなり高温になり排熱もすごいので、冬はいいのですが真夏はホントに大変です。

完成したクールガールの精細なカスタムハンド。最終的には、より精細なポリゴン形状に変換して、切削用のデータを出力します。カスタムハンド出力用のデータポリゴン形状は、こんな感じ。データ量が多くなるかわりに、滑らかな曲線になります。

      以上で完成した、ポリゴン原型データは可動しやすいようにできるだけ簡素化しています。このため、このままでは粗く、カクカクしているので切削用のデータには使えません。したがって、自分のイメージに合った女性らしいセクシーな手のポーズができたら、細分化して精細なポリゴンデータに自動変換させます。こうしてできあがった、精細データを3DCAMソフトへ出力して、CAM装置でABS樹脂から手の形を削りだすわけです。上図のように、オリジナルの可動用簡素化データと比べるとかなり細かいのがお分かりいただけると思います。

ボーンシステム3dsMaxのボーンシステム。骸骨みたいな形状が骨として可動します。ボーンシステムを組み込んだカスタムハンドボーンを組み込むと、モデリングデータに問題点が発生!ボーンシステムのカスタムデータ親指を上げたときに、不自然な手の形になります。

     さあ、カスタムハンドの基本形状ができあがりましたから、いよいよ稼動させるためのボーンシステムを組み込みます。3次元CGソフトによって、それぞれ独特のボーンシステムが採用されています。私の使っている3dsMaxでは、ごらんのようなキャラクタスタジオという名称のボーンシステムが採用されています。このシステムを、モデリングした全身のデータに組み込むことで、一体のキャラクタを丸ごと動かしてアニメーションさせることができるわけです。
     前ページの、足のカスタムパーツ作成では、可動させる必要がなかったのでこのシステムを組み込みませんでした。今回の、カスタムハンドパーツでは、何種類も作ることができるようにこのシステムを組み込みます。これにより、いちいち手のポリゴン形状を手動で修正する必要がなくなり、実際の人体同様に、動かしたい指の部分の骨を動かすだけで、実際の手のように、ポリゴンの手が動くわけです。
     ところが、いざボーンを組み込むと、黄色の矢印の部分で、親指のモデル形状とボーンシステムの親指の骨の位置が合わないことがわかり、無理やり骨を移動させました。しかし、残念ながら親指を上に動かすと、ご覧のように不自然な手の形になることがわかりました。これでは、ポーズ付けするたびに、いちいち手動でポリゴン形状を修正することになり、非常に手間がかかります。残念ながら、もう一度、原型の親指部分のモデル形状を修正することに。ただ、予定外の修正作業のため、3連休での作業はここまでで、時間切れ。あとは、また、毎晩少しずつ作業をするしかありません。

修正したカスタムハンド。親指の付け根全体のポリゴンを上に移動して、修正完了。やっと完成!7/23。完成したカスタムハンドのポリゴンデータ完成したカスタムハンドの原型データ。ボーンシステムも最適な配置に設定完了。カスタムハンドの完成モデル手のひらや、指の皺もクールガールの他のパーツとバランスがとれています。

     結局、親指の付け根から指先までのポリゴンデータ全体を上に移動修正して、ボーンシステムの親指の骨の位置にあわせることで問題点を解決させました。そして、各部分を可動させて、全ての指の歪みが無いかをチェックして7/23日に完成しました。やれやれです。結局、6/20から作業を開始して1ヶ月ちょっとで完成させることができました。これで、あとはポーズをつけて、気に入った手の表情になったら、その形状を細分化して精細ポリゴンに自動変換して3DCAMソフトへ出力すれば仮想空間での作業は完了となります。

ポーズをつけた、カスタムハンド。いったん、ボーンシステムを組み込んで原型を完成させたら、あとは思い通りにポーズをつけることができます。

     このように、ボーンシステムの組み込み作業は、実際のポリゴン形状を正しくボーンと位置合わせすることが重要です。正確に位置あわせできれば、本当に自分の手と同様に、自由自在に動かすことができます。不正確な配置だと、動かすたびに、あとでポリゴン形状をいちいち修正することになるので、結果的に時間が余計にかかります。ですから、はじめに時間をかけて、できるだけ正確に位置あわせしておけば、後の作業が大変楽になるわけです。
     ためしに、骨を動かしてみました。骨の動きに同期してカスタムハンドのポリゴン形状が追従変化してます。このように各骨を動かして、自分のイメージに合ったセクシーな表情のカスタムハンドのポーズ付けをすれば、即それが原型データとなるわけです。デジタル造形だからこそ可能な制作方法であり、アナログ造形では不可能な手法です。デジタル造形は、ボーン組み込みも含めて、原型製作にアナログ造形よりも、時間がかかりますが、いったん完成すると、バリエーションを何種類も作る場合でも、非常に短時間でできてしまいます。アナログ造形は、デジタル造形よりも短時間で一個の原型ができますが、何種類もたくさん作る場合は、そのつど同じ作業をくりかえすことになり、全体の所要時間は長くなります。言い換えると、一体の原型だけならアナログ、数種類のバリエーションをたくさん作る場合はデジタル造形でしょうか。ただ、両方造形できるかたは、私も含めて、ほとんどいらしゃらないのが残念なところですが…
     おまけに、動きをご覧ください。3次元CGアニメでは、このようにしてキャラクターを動かしているわけです。このアニメーションは動画の世界ではたかだか2秒ほどで、60フレームですが、造形する場合は、なんと、この各1フレームごとに、異なる手の形状をそのまま原型データとして出力して切削加工できるのです!ためしに、動画画面の下部スライダーを任意の場所にうごかしていただくと、1コマずつコマ送りすることができると思いますが、その各1コマずつの微妙な手の動きを見て、一番良いと思うポーズの手を見つけたら、そのフレームでとめて、そのまま切削加工して、私たちの手に触れるパーツを作れるというわけです。便利だなあと思いませんか?これこそ、デジアナ造形の面白さですね。言い換えると、皆さんが欲しいと思うような手のポーズをオーダーして、自分だけのお気に入りのカスタムハンドを特注することも可能になったわけです。さて、これで仮想空間でのカスタムハンドは造形できました。次回は、いよいよ仮想空間→現実空間へこの形状をCAM切削造形することになります。


クールガールの現実空間へ

   いよいよ、仮想空間から現実空間へのレポートは、次回に続く! 乞うご期待!